年下御曹司の箱入り家政婦

自宅についた私はリビングの電気をつけると
疲れたーっとソファにドスッと腰を下ろした。

ウーンっと大きく伸びをして
お風呂入って今日は早めに寝よう
と考えていると

コツコツッ

ベランダの窓から奇妙な音が聞こえた。

ん?気のせい?

締め切ったカーテンを眺めていると
再び窓からコツコツッと小さな音が聞こえた。

気のせいじゃない ...

私は恐る恐る窓に近づくと
シャッと勢いよくカーテンを開けた。

「わぁっ!?」

ベランダには部屋着に着替えた櫻ちゃんが
私の顔を見て無邪気な笑顔をうかべなら「羽菜ちゃーん」と手を振っている。

びっくりした私は思わず再びシャッとカーテンを閉めた。

どうやって私の部屋のベランダに入ったの?

ここはマンションの10階段だ。

運動神経の良い櫻ちゃんでも流石に渡ってくるなんてあり得ない。

そんなことを考えている間にも
窓の外では「羽菜ちゃん開けてー」と
櫻ちゃんが窓をコツコツ叩いている。

私は再びカーテンを開けて渋々窓を開けた。

「どうやって入ったのって...あーーっ!!」

目に飛び込んできた光景に思わず目を見開いた。

非常用扉が蹴破られて下の部分に大きな穴が開けられていたのだ。

「何をかんがえてるのよ!!
借りてる部屋なのにこんなとこに穴を開けてどうすんの(怒)」

私は穴の前にしゃがみこむと散らばった破片を手に取って大きく溜め息をついた。

「だってこの扉通るのに邪魔だったから」

「そんな言い訳が通用するか!」

私は後ろから覗きこむ櫻ちゃんの頬っぺたを思い切りつねった。

「イタタタっ...ごめんなさい」と、涙目の櫻ちゃん。

そこら辺の悪がきのほうがまだマシだ。

私は仕事の疲れも相まって「もう、知らない...」と脱力した状態で窓から部屋に戻る。

この一週間、仕事を覚えるのにずっと気を張ってきたから余計に心労に堪える。

そんな私の心情を知ってか知らずか、一緒に部屋の中に入ってきた櫻ちゃんは「そうだ!久しぶりにゲームでもしようよ!!」と同じ仕事を始めだばかりのものとは思えないような元気ぶりだ。

「羽菜ちゃんとしようと思って色々ゲームかったんだよねー」

あまりにも自分勝手な櫻ちゃんにイライラが募る。

私は思わず「もういい加減にして!!」と叫んでいた。

「仕事始めたばかりで、櫻ちゃんみたく私は余裕ないんだから!!」

悲しそうな櫻ちゃんの顔が目に入ってるのに私は自分を止めることができない。

「櫻ちゃんももう社会人なんだから、そろそろ姉離れしてよ!!」

自分の思いをぶちまけてスッキリするどころか私の心はひどく後悔している。
櫻ちゃんの悲しみの色に沈んだ瞳を見ると自分がひどい人間だと思えてくる。
今さら気付いても言ってしまったことは取り消すことはできない。

「ごめん...言い過ぎた」

私は櫻ちゃんから目を反らした。