浴場に入ると朝早いこともあって
誰もいなかった。

私は洗い場で軽く体を流して
露天風呂へと向かった。

そして案の定、ここも先客は見当たらない。

ゆっくりお風呂に浸かると
「はぁ〜、気持ちいい」
思わず声を漏れる。

私は首元までお湯に浸かり
岩肌を背に天を仰いだ。

朝の少し冷たい空気が心地良くて
気持ちよさに目をつぶると
昨夜、櫻ちゃんにキスされたことを
思い出してパチリと目を開いた。



やだ私...
なんで櫻ちゃんを思い出して
こんなにドキドキしてるのっ

私は熱くなっていく顔を
両手で覆った。


そして、昨夜の記憶が
次々と蘇ってくる。


そうだ. . .

私あの時、気づいたんだ

櫻ちゃんに“好き過ぎて苦しいよ”と
抱き締められたときに
やっと気づいた。

私も櫻ちゃんが好きなんだと...

この締め付けられるような胸の痛みが
弟なんかじゃなくて
一人の男の人として
意識してしまっていることを証明していた。