「神様もきっとあきれていると思うわ」

「そんなことないよ。
神様は僕の味方だから
きっと応援してると思うね」

「随分と都合がいいわね」

「そしてこうも言ってると思う。
羽菜ちゃんに好きになってもらえるように
もっともっとアピールしなさいって!!」

「神様はそんな人様を困らすようなこと
言わないわよ。
少しは自制しなさいって
きっと怒ってるわ。」

「えぇ〜こんな可愛い羽菜ちゃんを前に
自制しろだなんて神様はひどいな」

僕はそう言って羽菜ちゃんの顔を覗き込む。

「だから、そういう恥ずかしいこと
すぐ口にしないでよ」
 
羽菜ちゃんは真っ赤な顔で呟いた。

「赤くなってる。羽菜ちゃん、可愛い。」

照れ臭さを必死に隠そうとする
羽菜ちゃんに顔が緩む。

「もういい!もう何も言わない!!」

羽菜ちゃんは
赤く染まった顔を見られないように
そっぽを向いた。


ちょっと困らせ過ぎたかな...


「羽菜ちゃん...
大好きだから、怒らないで...」


僕はなだめるように優しく呟いた。


羽菜ちゃんはその言葉に対して
何も返すことはなかったが
代わりに
繋いでいた手にキュッと力を込めた。

それが新にも誰にも気づかれない
二人だけの秘密の会話のようで
僕は嬉しかった。


それから、僕達は
3人で宴会場に戻ると
待ってましたというように
再び羽菜ちゃんをお店の人達に
取られてしまった。

しかし、最初のように嫉妬で
モヤモヤすることはなかった。

なぜなら、羽菜ちゃんが
最後に握り返してくれた手の感触が 
宴会の最中もずっと
僕の胸をキュンと心地良く
締め付けていたからだ。

そしてその痛みは
宴会が終わり
僕が眠りにつくまで
続いたのだった。