年下御曹司の箱入り家政婦

「それは分かってます..」

私はムッとしたように頬を膨らませた。

「まったく新ちゃんは言い方ってものがあるでしょ!そんなだから彼女出来ないのよー」

まかない用の食事を作っていた関さんが呆れた顔で溜め息をついた。

しかし、新さんは「女なんて面倒くさいだけだ」と気にもとめていない様子だ。


「でも、いつかは焼き方教えてくださいね」

私は神頼みするように合掌してみせた。

なおも泡立て器で軽快なリズムで生地をかき混ぜている新さんは面倒くさそうに肩で大きく溜め息をつく。

こんなことでめげていたら、一生教えてくれそうにない。

「ねぇ?関さんも新さんにパンケーキの焼き方教えて欲しいですよね?」

私は関さんに助っ人を求めた。

しかし、関さんは
「いやぁよ!
私、甘いものって正直あんまり好きじゃないのよね。それ以上に新に教えてもらうなんて絶対イヤ!!
こいつ初対面でなんて言ったと思う!?
私のこと男女って言ったのよ!!失礼しちゃうわ(怒)」
プンプンと頭が沸騰しだして私の助っ人になってくれそうにない。

「そういえば、私の頭を指差して亀仙人とも言われたわ(怒)」と新さんへの鬱憤を爆発させる関さんを横目に私は新さんに向き直る。

こうなったら一人で説得を試みるしかない!

「でも、新さん性格はねじ曲がってますけど
パンケーキはとーっても美味しくて世界一です!」

焦った私はポロっと余計な本音をこぼしてしまう。

私の言葉にピタッと二人の動きが止まる。

私は「あっ!」と自分の失言に気付き口を押さえた。

関さんはブーッ(笑)とふきだして
「そうよねー(笑)
性格最悪だけど
パンケーキは天下一品よねー(笑)」
と、お腹をかかえて笑いだした。

新さんはジトーっとした睨みをきかせながら「あと一万年は教えてやらねぇ」と再び泡立て器をかき混ぜ始めた。

「そんなぁー(泣)年数増えてますー(泣)
さっきのは言葉のあやですよぅ(泣)」

私は涙目でガックリと肩を落とす。

関さんは「羽菜ちゃんがんば!!」と肩を震わせて笑いを堪えている。