年下御曹司の箱入り家政婦

嫉妬にかられて
新と喋るなと言ったものの
自分でもやり過ぎかなとは
思っていた分、二人の言葉が
グサグサと胸に突き刺さる。

「分かった...
今日だけは目をつぶるよ...」

僕は消え入るような声で
呟いて白旗を上げた。

その言葉に羽菜ちゃんは
「やったぁ、櫻ちゃんありがとう」
解放されたように手を上げて喜んでいる。

「関さんもありがとうございます」

そして羽菜ちゃんは
関さんに笑顔でお礼を言う。

「だって折角の親睦を深める会なのに
皆で喋れないんじゃ、つまんないじゃない」

「たまにはオカマも役に立つな」

新がからかい混じりに口を挟む。

「うるさいわね。
オーナーいないんだから
あんたがさっさと乾杯して始めなさいよ」


「そうだな。じゃあ、簡単に。」

新はゴボンと軽く咳払いすると
ビールの入ったグラスを持った。

僕も渋々、グラスを手にする。

「皆、いつも、お店のために
頑張ってくれてありがとう。
今日は好きなだけ食べて飲んで
楽しんでくれ。
それでは、乾杯」


新の乾杯の音頭で宴会が始まった。

しかし、楽しいはずの宴会なのに
4人はほとんど仕事の話で
僕達は全く会話に入れないでいた。

羽菜ちゃんを取られてつまらないし
羽菜ちゃんと新が笑い合う度に
ズキズキと胸が傷んで苦しい。

しかし、目をつぶると言った手前
何も言えない僕は不貞腐れながら
ただひたすら料理とお酒を飲み食いするだけだ。

目の前の斗真は茜さんと
全く会話できてないにも関わらず
蟹に夢中で幸せそうだ。

僕もこいつくらい単純だったら
良かったのに...

羽菜ちゃんは隣で
ケタケタとお腹を抱えて
談笑している。

羽菜ちゃんは僕じゃなくても
楽しそうだし...

僕は寂しさのあまり
盛大な溜め息を吐いた。

すると、横から羽菜ちゃんが
「はい、櫻ちゃん」
と、殻を取り除いた蟹を
僕のお皿の上に置いた。

「大人しくしてくれてる、ご褒美」

そう言って羽菜ちゃんは優しく微笑んだ。

それだけで僕の胸はじ〜んと熱くなる。