年下御曹司の箱入り家政婦

「もう、櫻ちゃん!!
社員旅行で別行動とるなんてありえないんだからね!」

私は櫻ちゃんの車のボンネットに
手をつき、呼吸を整えながら
櫻ちゃんを睨みつけた。

「大丈夫、大丈夫!
どうせ目的地は同じなんだし。」

嬉しそうにそう話す櫻ちゃんに
反省の色はない。

自分中心で世界が回ってる
櫻ちゃんに一般常識は通用しないのだ。

そこへ、走り疲れてフラフラの
斗真くんが車の前で倒れ込む。

「せっかく温泉街に来たのに
まだぜんぜん美味しいもん食べれなかった。
少しぐらい観光しようぜ」

斗真くんは櫻ちゃんに救いを求めるが
櫻ちゃんは「行きたきゃ、一人で行けよ」
とそれをあっさり切り捨てる。


そして、助手席側のドアを開けると
「きったねぇなぁ」
とコロコロで斗真くんが食べ溢した
お菓子のカスを片付け始めた。

「斗真は後ろに乗れよな」

そして斗真くんの飲みかけのペットボトルを
後部座席に投げる。

「ほら、羽菜ちゃん。
羽菜ちゃんの席は僕の隣だよ。」

櫻ちゃんはドアを開けたまま、
私が乗るのを嬉々とした眼差しで待つ。

ほんと、櫻ちゃんには誰も敵わないわ...

私は大きく息を吐くと
渋々、助手席に乗り込んだ。

すると櫻ちゃんは満足したように
微笑んで助手席のドアを閉めた。

そして運転席側に回ると
未だに路上に倒れ込む斗真くんに
「お前、お邪魔虫なんだからついでに
旅館まで走れよ」
とシッシッと手で追い払う仕草をしてから
車に乗り込んだ。

「この鬼畜めっ。
親友と女、どっちが大事なんだよ?」

斗真くんは文句を垂れながらも
急いで後部座席に乗り込む。

「勿論、100対0で羽菜ちゃんだよね。」

櫻ちゃんは当たり前というように
言い切ると車を発進させた。