年下御曹司の箱入り家政婦


櫻ちゃんは私の方に
チラリと目を向けると
「わかった!
俺たちもそっちの旅館に泊まる!」
腹を括ったように言った。

「櫻ちゃん、本気で泊まる気!!
新さんと同室なのよ??平気なの?」

私は考え直してほしくて
もう一度願いを込めて確認する。

そんな私に櫻ちゃんは 
くどいというように
じっとりした目を向ける。

「だって、羽菜ちゃん、
面倒くさいから泊まるなって願ってたでしょ??」

「ゔぅっ、それは... 」

否定できない...

私は何の反論も言えず押し黙った。

「よし、決まりだな。
それなら、さっさと旅館に戻るぞ。
チェックインの時間決まってるんだからな」

新さんは私に向かって
バスに乗るよう顎でしゃくってみせた。


「わぁ、なんだか楽しくなってきました〜」

私と違い茜ちゃんはなんだか楽しそうだ。


「温泉温泉♪♪」

先程までしかばね状態だった斗真くんは
すでに温泉へと気持ちが切り替わっている。


はあ...なんでこんなことに...

私は斗真くんみたく、
そん簡単に気持ちを切り替えることはできない

でも、櫻ちゃんが決めてしまった以上
もう諦めるしかない...

「櫻ちゃん、また旅館でね...」

諦めモードの私は櫻ちゃんに
そう一言呟くとバスに向かって
トボトボと力なくあるき出した。

すると、急に櫻ちゃんの手が伸びてきて
「羽菜ちゃんはこっち」
と、私の腕を掴んだ。


「えっ!?」


「羽菜ちゃんは僕の車で連れて行くんで!!」


櫻ちゃんは新さんに向けて叫ぶと
戸惑う私をよそに
お構いなしに走り出した。



「おい!!」


後ろの方で新さんの呼び止める声が
聞こえたが櫻ちゃんは
止まる気配はない。

それどころか、
まるで鬼ごっこで鬼から逃げるように
「ウシシッ」と悪戯な笑みを浮かべている。

ったく、もう...


私はやれやれというように
渋々一緒に走る。


「櫻介〜!!
俺を置いていくなよ〜!!」

斗真くんも置いていかれないよう
必死に私達の後を追ってくる。