それから引っ越しまでの数週間はあっという間だった。
引っ越し先はおじ様の紹介で仕事場の近くの1LDKの築浅の賃貸マンションに破格の価格で住むことに決まったのだ。
オートロックもついたセキュリティ面で安心なところにすむことがおじ様とおば様の一人暮らしの条件だった。
つくづく至れり尽くせりで申し訳ないほどだ。
マンションの契約も交わして
家電や家具を揃えたりと順調に引っ越しの準備が進んで行くなかで、心残りは櫻ちゃんのことだけだった。
あれから、櫻ちゃんは朝夕の食事も外で済ませてしまい顔を合わせていないのだ。
こんな形で家を出ることを望んだ訳ではない。
何もしてあげることが出来ない自分にやきもきしながらも、自立して仕事を頑張ることで
櫻ちゃんに認めてもらうことを願うしかない。
引っ越し当日もおじ様とおば様だけで櫻ちゃんが見送りに来てくれることはなかった。
少し寂しい気持ちのまま、
新居に着くと
段ボールに詰まった荷物を一人黙々と
片付けていく。
最後の段ボール入っていたのは
櫻ちゃんが誕生日にくれたテディベアの
ぬいぐるみだった。
「結局、櫻ちゃんとは話できなかったな...」
溜め息をつきながら、テディベアをベッドの上にそっと置いた。
そうだ...お隣さんに引っ越しの挨拶でもしてこよう...
私はテンションが上がらないまま、買ってきた菓子折りの包みを手に部屋を出た。
左隣は同年代くらいの若い女の子だった。
もし男性だったらと少し不安もあったが、おじ様はそれも考慮して選んでくれたのだろう。隣人が女性でホッと胸を撫で下ろす。
そして次に、右隣の部屋の前に行くとインターフォンを押した。
しばらく経って「はい」と低い男性の声が聞こえて一気に緊張が高まった。
私はすぐさまインターフォン越しに「すみません。隣に越してきたもので引っ越しの挨拶に来ました」と答えた。
しばらくして、部屋のドアの鍵がガチャリと回された音がした。
思わず持っていた菓子折りの入った袋をギュッと握りしめる。
しかし、開かれたドアから現れた顔に
私は思わず目を見開いた。
「えっ?櫻ちゃん?なんで?」
それは部屋着姿の櫻介だったのだ。
「羽菜ちゃんが自立するっていうから
僕も自立して一人暮らしすることにしたんだ。」
そう言ってイタズラな笑みを浮かべる櫻ちゃん。
えっ?なんで?どういうこと?
思考がついてない私は
思わず頭を抱えた。
そんな私の混乱にも上機嫌の櫻ちゃんは気にも留めていない様子で
「よし、取り敢えず羽菜ちゃんの部屋で引っ越し祝いしよう!たくさん買ってきたんだ!」
そう言いながらパンパンに詰まった買い物袋を掲げてみせた。
そして、鼻唄を歌いながら私の部屋へと一人先に入っていく。
そういえば引っ越し前に、机の上に置いてた物件の情報が書いた書類が無くなったと思ったら次の日には元の机の上に戻っていたりしたことがあった。
おじ様とおば様に姿を見せない櫻ちゃんのことを聞いても何か誤魔化すように言葉を濁してたし。
「あーなるほど...頭いたい...」
次第に状況をのみこんでいった私は重い足取りで櫻ちゃんの後に続いた。
引っ越し先はおじ様の紹介で仕事場の近くの1LDKの築浅の賃貸マンションに破格の価格で住むことに決まったのだ。
オートロックもついたセキュリティ面で安心なところにすむことがおじ様とおば様の一人暮らしの条件だった。
つくづく至れり尽くせりで申し訳ないほどだ。
マンションの契約も交わして
家電や家具を揃えたりと順調に引っ越しの準備が進んで行くなかで、心残りは櫻ちゃんのことだけだった。
あれから、櫻ちゃんは朝夕の食事も外で済ませてしまい顔を合わせていないのだ。
こんな形で家を出ることを望んだ訳ではない。
何もしてあげることが出来ない自分にやきもきしながらも、自立して仕事を頑張ることで
櫻ちゃんに認めてもらうことを願うしかない。
引っ越し当日もおじ様とおば様だけで櫻ちゃんが見送りに来てくれることはなかった。
少し寂しい気持ちのまま、
新居に着くと
段ボールに詰まった荷物を一人黙々と
片付けていく。
最後の段ボール入っていたのは
櫻ちゃんが誕生日にくれたテディベアの
ぬいぐるみだった。
「結局、櫻ちゃんとは話できなかったな...」
溜め息をつきながら、テディベアをベッドの上にそっと置いた。
そうだ...お隣さんに引っ越しの挨拶でもしてこよう...
私はテンションが上がらないまま、買ってきた菓子折りの包みを手に部屋を出た。
左隣は同年代くらいの若い女の子だった。
もし男性だったらと少し不安もあったが、おじ様はそれも考慮して選んでくれたのだろう。隣人が女性でホッと胸を撫で下ろす。
そして次に、右隣の部屋の前に行くとインターフォンを押した。
しばらく経って「はい」と低い男性の声が聞こえて一気に緊張が高まった。
私はすぐさまインターフォン越しに「すみません。隣に越してきたもので引っ越しの挨拶に来ました」と答えた。
しばらくして、部屋のドアの鍵がガチャリと回された音がした。
思わず持っていた菓子折りの入った袋をギュッと握りしめる。
しかし、開かれたドアから現れた顔に
私は思わず目を見開いた。
「えっ?櫻ちゃん?なんで?」
それは部屋着姿の櫻介だったのだ。
「羽菜ちゃんが自立するっていうから
僕も自立して一人暮らしすることにしたんだ。」
そう言ってイタズラな笑みを浮かべる櫻ちゃん。
えっ?なんで?どういうこと?
思考がついてない私は
思わず頭を抱えた。
そんな私の混乱にも上機嫌の櫻ちゃんは気にも留めていない様子で
「よし、取り敢えず羽菜ちゃんの部屋で引っ越し祝いしよう!たくさん買ってきたんだ!」
そう言いながらパンパンに詰まった買い物袋を掲げてみせた。
そして、鼻唄を歌いながら私の部屋へと一人先に入っていく。
そういえば引っ越し前に、机の上に置いてた物件の情報が書いた書類が無くなったと思ったら次の日には元の机の上に戻っていたりしたことがあった。
おじ様とおば様に姿を見せない櫻ちゃんのことを聞いても何か誤魔化すように言葉を濁してたし。
「あーなるほど...頭いたい...」
次第に状況をのみこんでいった私は重い足取りで櫻ちゃんの後に続いた。



