年下御曹司の箱入り家政婦

それから一通り園内を回った私達は
最後にアルパカの檻の前で足を止めた。

「アルパカ、可愛い♪」

私と茜ちゃんはその愛らしいフォルムとつぶらな瞳に目を細めた。

そこに再び新さんが口を開く。

「アルパカは犬のように尻尾で感情を表現するんだ。
尻尾を真っ直ぐ挙げたときは嬉しい時、
曲げて上に挙げていたときは"負けました"と思った時、
そして恐怖や不安を感じたときは
尻尾を丸めるんだ。」

「へぇ~」私達は再び感心した。

そして、アルパカの可愛さに魅せられた
茜ちゃんは「おいで~」と
餌で一生懸命おびき寄せている。

「新さんなんでそんなに動物のこと詳しいんですか?」

私は隣でアルパカを眺めている新さんに問いかけた。


「子どもの頃から動物が好きで
よく動物の生態の本ばかり読んでたからな。
うちにもポメラニアンが
白と黒の2匹いるよ。」

「えっ、
ポメラニアン2匹も飼ってるんですか!
いいなぁ、可愛いですよね。羨ましい。」

「ああ、可愛い過ぎて
つい甘やかしてしまうけどな。
お前を初めて見たときは
うちの白のポメラニアンかと思った」

新さんは思い出したように優しく微笑んだ。

私は先ほど可愛いと言った手前
なんと返したら良いか分からず
ただ頬を赤らめた。

「因みに、アルパカは身の危険を感じると
威嚇するために敵に唾を吐きかけることがある。その唾は強烈に臭いらしい。
そこらへんのオッサンの唾よりよっぽど臭いから気をつけろよ。」

新さんの言葉に私はウゲッと顔をしかめた。



そこにベンチで休んでいた関さんが
「ああ~、
暑いし臭いし早く次に行きましょ。」
と疲れた様子で
愚痴を言いながらやってきた。

すると、
「あっ、あのアルパカが
尻尾を丸めましたよ!」
茜ちゃんが突然一頭のアルパカを
指差して叫んだ。

私と新さんが目を向けると
先ほどまで穏やかな表情だった
アルパカが凄い形相で
此方に向かって走ってきた。

そして、関さんの前で止まると
ペッと勢いよく関さんの顔めがけて
唾を吐きかけた。

その光景に私達や他の見物客も
目を見開いて固まる。

「ギャー、なによこれ!!
うわっ、くっさ!!」

関さんはあまりの臭さに悶絶しながら
「くさーーい」と大騒ぎし出した。

「関はアルパカに敵認定されたようだ」

新さんは助ける様子もなく
淡々とした口調で関さんを眺めている。

茜ちゃんはそれを見て
ギャハギャハとお腹を抱えて大笑い。

周りの見物客もクスクスと笑っている。

私は流石に可哀想なので
「関さん大丈夫ですか?」
と、ハンカチを差し出しながらも
笑いを堪えるのに必死だ。

「いやーー!!」と泣き叫ぶ関さんに
「臭いから近寄るな」と冷静に距離を取る
新さん。

一際、騒がしい私達一行は
周りの見物客から見たら
かなり浮いていただろう。


そんなハプニングに見舞われながらも
楽しい動物園を終えて私達は温泉街へと向かった。