side羽菜

「うわっ、僕の今日の運勢最下位じゃん(ガーン)
あっでも、羽菜ちゃんは一位だ♪ならいっか」

朝ごはんを食べ終えた櫻ちゃんは
スーツ姿でテレビの占いランキングに
一喜一憂している。

私はそれを横目に二人分のお弁当箱を
ダイニングテーブルの上に置いた。

「櫻ちゃん、お弁当作ったから
お昼に斗真くんと一緒に食べてね」


「えっ?お弁当作ってくれたの!」

櫻ちゃんはお弁当を見ると嬉しそうにはしゃぎながらも
「斗真の分はいらんのに」と(わずら)わしそうに肩をすくめた。

「櫻ちゃんも斗真君も休日出勤で出張なんて大変ね」

「まあ斗真の方は仕事っていうよりは旅行気分で浮かれてたからな。
羽菜ちゃんは今日から梓さんと旅行だよね?
逢えないのは寂しいけど折角だから楽しんできてね」

「う、うん。ありがと...」

櫻ちゃんの屈託のない笑顔に
少し言葉を詰まらせてしまう。

私は“まずい!変に思われてしまう”と慌てて
笑顔を作って誤魔化した。

私はここ数日間、罪悪感に(さいな)まれながらも
櫻ちゃんに不信感を与えないように
いつも通りに振舞ってきた。

それが今日でバレてしまっては今までの苦労が水の泡だ。

それというのも実は梓と旅行というのは真っ赤な嘘で
今日から1泊2日で仕事場の皆で慰安旅行だ。

毎年この時期になると、
カフェレストランSizuku雫は
オーナーの粋な計らいで
小さなバスを借りて皆で温泉旅行に行くというのが恒例なのだという。

きっと櫻ちゃんに言ったら、旅行に行くこと自体にNOを突き付けるか
はたまた自分も参加すると言い出しかねない。

私は櫻ちゃんに言うか言うまいか悩んだ挙句
それを梓に相談したところ、
梓が二人で旅行に行くという口裏を合わせてくれることになったのだ。