これが全て僕の嘘だと
薄々勘づいた羽菜ちゃんは
少しの間、ぶつぶつと小言を
言っていたのだが
僕の狸寝入りに諦めたようだ。

僕を膝枕したまま
テレビを観始めた。

そして時折、僕の髪をさわさわと優しくなでる。

まさに至福のひとときだ。

あまりの気持ちよさに本当に眠ってしまいそうになる。

日中は羽菜ちゃんに仕事で逢えない分
この時間は僕が羽菜ちゃんを充電する貴重な時間なのだ。

そして、僕はウトウトと夢心地で
今日のことを思い返した。

羽菜ちゃんが初めて焼きもちを焼いてくれた。

今日は自惚れではなく
羽菜ちゃんとの恋がかなり進展したように思う。

ちょっとずつだけど確実に羽菜ちゃんは
僕を意識し始めている。

でも、まだ駄目だ

もっと確信が欲しい...

羽菜ちゃんの口から“愛してる”って
聞きたい。

僕が羽菜ちゃん無しでは生きていけないように羽菜ちゃんももっと僕を求めてほしい。

僕はそんな幸せな妄想をしながら
夢の中へと意識を手放した。

この時から僕は浮かれてしまって
羽菜ちゃんに関しての犬並みの嗅覚を
鈍らせてしまっていた。

思い返せば、
羽菜ちゃんの様子に違和感を少しばかり
感じてはいたのに
慢心からこのサインを見逃してしまったのだ。

そして2週間経ったある日、
この気の緩みから僕にとっては
ただならぬ出来事(緊急事態)が
勃発したのだ。