年下御曹司の箱入り家政婦

ああ、何で私あんな言い方して
櫻ちゃんの手を振り払っちゃったんだろう...

きっと私が去った後の
櫻ちゃん達の空気は悪くなったはずだ。

大人げなく取り乱した自分が
恥ずかしくて情けない...

手に負えない自分の感情に
どうしてよいのか分からなくなる。

そんなことを考えていると
チョコプレートに書き直した
happybirthdayの文字が涙でボヤけてきた。

いけない、仕事中なのに...

私は涙がこぼれ落ちないよう
急いで手で涙を拭った。

すると、私の頭に大きな手が
ふわりと優しく添えられた。

振り返ると新さんが心配そうに
こちらを見下ろしていた。

「何かあったのか?」

そして優しい声色で聞いた。

私はフルフルと首を横に振った。

「なんでもありません!
ちょっと目にゴミが入ったみたいで...」

私は恥ずかしくて
赤くなった目をこする。

「おい、あまり擦ったら目に傷がつくぞ」

新さんは私の顔をグイッと上に向けると
瞳を覗きこんだ。

「ゴミは見当たらないけど...
あまり痛かったら少し休んでもいいんだぞ?」

新さんの優しい言葉にホロリと
一つ涙がこぼれた。

「泣くな。
お前の涙を見るとたまらなくなる...」

新さんは瞳を揺らすと
私をそっと抱き寄せた。

目が痛いんじゃない。

さきほどから痛んで止まないのは
私の心だ。

私は新さんの胸の中で
苦しさにギュッと目を瞑った。

すると、「ゴホンッ」と厨房に
野太い咳が響き渡った。

「あの~お二人さん?
ここに私もいることをお忘れなく...」

関さんが遠慮がちに呟く。

その声に私達は慌ててバッと
距離を取った。

「いるならいると言えよ!」

新さんは顔を真っ赤にしながら
ぶっきらぼうに言った。

「さっきからずうーっといるわよ!
急に二人の世界に入ったもんだから
こっちも見ててどうしようかと思ったわよ!
いちゃつくのは仕事終わってからにしてよね!!」

関さんはお玉を片手に振り回しながら
ヒステリックにわめき散らしている。

私はあまりの恥ずかしさに
身を小さくして縮こまった。