マーメイド・セレナーデ

校門を出ると、学校名が刻まれた石に寄りかかる人影があって驚いた。
泣きそうになる理由が分からない。

だけど、俺は真知を一瞥するとそのまま通り過ぎて、足を進めた。
後ろから駆け足で近づいて隣に並んで同じ歩幅で歩き出す。俺が、合わせて歩き出す。

もうずっと、前から真知の歩幅は身体で覚えていた。


忘れるはずない、真知のこと。
もう身体に染み込まれている。


いままでは。


俺に窺うような視線に、何処に行ってたの、と聞こえるくらいに顔に表れていた。
けれど、言葉に出さない限り俺だって答えない。


もう、幼い頃のままで居られない。
俺も、お前も。


何知らぬ顔で足を動かす。


俺は、もう決めた。

だから、賭けをしよう。
あと1年、お前も同じように悩んで、不安に思って、得体の知れないものに苛立つときがくるなら。



「帰ろう、真知」

「翔太?」



俺だって、幼い頃の約束に囚われていたわけじゃない。
自ら進んで、受け入れてた。


だけど、このままじゃいけねぇじゃねぇか。
ガキのまま大きくなるのは、俺だってごめんだ。



突き放すときがきたって、いいじゃねぇか。





けれど結局、離れられないのは俺の方だと気付かされるのは1年後。





【END】