2月の終わり。
今年の冬は暖冬だそうで、雪もなく穏やかな日が続いている。
私は半月の休養後勤務に戻った。

もちろん妊娠のことは公表していないけれど、周りにいるのは看護士やドクター達。
みんななんとなく気づいている気がする。
そりゃあね、何の説明もなく2週間も休めば誰だって気付くだろう。
でも、平気。
わざわざ言いふらす気はないけれど、聞かれれば認めるし、この子のことを隠すつもりはない。

私はそっとお腹に手を当てた。
最近、お腹を触るのがあたしの癖。
こうしているだけで、とっても幸せな気持ちになれる。

「桜子先生。今日は当直ですか?」
病棟師長が声をかけた。

「はい。久しぶりの当直です」
休養明けもしばらくは夜勤を外してもらっていたため、今日は1ヶ月ぶりの当直。
「体、大丈夫ですか?」
心配そうな視線。

師長だって、きっと察しているはず。
でも、何も聞かないでいてくれる。
そのことがありがたい。

「大丈夫ですよ。もうすっかり元気ですから」
私は精一杯笑ってみせた。