休憩室にはすでに何人かのスタッフがいた。

「桜子先生。お先にいただいてます」
テーブルの上には手作りの煮物や栗きんとん、かまぼこや伊達巻きが綺麗に詰められたお重。
美味しそう。

「先生。おそば食べます?」
おそばの入ったお椀を片手に、鍋からつゆをよそおうとしている。
「はい。ありがとうございます」

タケノコ、こんにゃく、油揚げ、しいたけ、人参。
彩りよく煮しめられた煮物は、家庭の味で美味しかった。
家でも母さんが作っているだろうななんて思いながら、おせちをいただいた。
ズルズルとお蕎麦をすすりながら、スタッフ達と初詣の話で盛り上がった。

「桜子先生。年賀状です」
ちょうど休憩室に入ってきた看護師が届けてくれた。
「ありがとう」

そこには20枚ほどの私宛の年賀状。
患者の保護者からのものもあれば、子供からのかわいいものもある。
みんな病棟で診察した子供達。
こんな正月もありだなと、ふと思った。

あと3ヶ月すれば、私の研修医も終わる。
そろそろ本気で、将来のことを考えなくては・・・

その時、
ゴホゴホ
急に咳き込んだ。

ん?
そばが気管に入ったかな?
なんだか、喉が詰まるような・・・ムカムカするような・・・

「大丈夫ですか?」
スタッフに声をかけられ、
「大丈夫です。急いで食べて、むせちゃったみたい」
と答えてはみたけれど、私は急に不安になっていた。