莉子(りこ)、もうすぐ着くわよ」


そう言って、お母さんが助手席から後部座席に座るわたしに顔を向ける。


「…は〜い」


そんなお母さんに対して、気の抜けた返事を返す。


「なんだ莉子、その返事はっ」


それに反応したお父さんが、ルームミラー越しにわたしに目を向ける。


「…だって、やっぱりなんか。心の準備が…」

「まだそんなこと言ってるのか〜。まあ…それもわかるが、『住めば都』って言うからな」

「そうよ、莉子。それに、みんなで決めたことでしょ?それとも、お父さんと離ればなれで暮らすほうがよかった?」

「そりゃ…そっちのほうがいやだけど。でも、なんか別世界にきたような気がして…」


わたしは膨れっ面で、車の窓から外の風景を眺める。


高速道路の上からでも、よくわかる。