「さ、むい……ねむ、い……」

 都会のど真ん中の街角で、雪山遭難でもしているかのような台詞(セリフ)を吐き出し、目を閉じたままの凪徒の顔が、『モモのほっぺ(カイロ)』の温かさを求めて近付いてきた。

 モモは思わずのけぞったが、右頬を覆う掌に邪魔されて全く逃げ場がない。

「うっ」

 ──先輩の息で、こっちまで酔っちゃいそうだ……。

 香るウォッカにモモは顔をしかめた。

 ──や、やっぱり、やだっ! こんなにお酒臭くて、先輩の記憶にも残らないファースト・キスなんて~っ!!

 と、その時──。



『凪徒くん、凪徒くん、今すぐモモから離れなさい』



「え?」

 ──団長!?

 何処からか団長の声が聞こえ、凪徒の行為を(いさ)めたのだ。

「団長~? まっさかなぁ……此処はロシア! モスクワだぞ~? 第一、俺はモモになんて……俺が触れてるのは、カイ──」

 ──ひゃあああっ!!

 益々近付く凪徒の(おもて)。すると更に、