凪徒の向こうに見える歩道を歩く人波が、こちらに目を向けては冷やかしの口笛を鳴らしたり、ギョッとした顔で過ぎていった。

「せ、先輩!? あ、圧死する~~~! 凍死する~~~!!」

 モモは雪と凪徒の狭間(はざま)で身動きが取れなくなりながらも、必死に叫んでみたが、

「圧死はともかく、凍死はねぇだろ~? だって……こんなにあったかい……カイロがある……」

 雪に突っ伏しながら答えた凪徒の返事に、一瞬驚き固まった。

 ──そ、それは、あたしの赤面している『ほっぺ』ですから~!!

 確かに凪徒の左掌はモモの右の頬を包んでいて、その頬は()れたように赤らみ、熱を発していた。

「俺……初めて……酔ったかも……。気持ち、いいもん、だな……」

 そうしてやや向こうを向いていた凪徒の顔が、モモの方へ返された。余りに近い距離のニヤけた寝顔に、モモは再び抵抗する力が抜けてしまった。

 ──あ、あたし……もし……このまま『事故』でキスしちゃっても、先輩だったら嫌じゃないんだろうか……?

 ふとそんな疑問がよぎる。