「先輩って……どうしてお酒飲むんですか?」

 まもなく二桁に差し掛かりそうなおかわりの回数を数えて、さすがに(いさ)めてみようかと思い立ったモモは、少し消極気味に凪徒へ質問をした。

「どうしてって……? ……酔うと心地良くなるからか?」

 凪徒は飲み干したグラスをテーブルに置き、モモの方へ顔を向けたが、特に理由が見当たらず、視線は(くう)へと上げられた。

「先輩の酔ったところ、見たことがない気がするんですが……」

 ──俺もそんな覚えないな……。

 モモの指摘に、心の中で思わず苦笑いをする。

「ほ、ほら、ストレス解消だな、きっと!」

「酔わないのにですか?」

「うーん……」

 再び突っ込まれた凪徒は腕を組んで(うな)ってしまった。

 ──俺、確かに何で飲んでるんだ?

「……まぁ雰囲気だろ、こんなもん」

 そしてふと、この旅行に一つの目標が思いついた。

 ──ウォッカの本場ロシアとなれば、さすがの俺でも酔えるかもしれない!?