この一週間は気付けばあっと言う間に過ぎ去っていた。

 休演日の水曜には同じ寝台車メンバーの独身女性三人に買い物を付き合ってもらい、モモは何とかロシア旅行の準備を整えた。

 それでも初めての海外旅行であること、ただの観光旅行とは違い、当てもない母親の行方を探す旅であること、更に凪徒との二人きりでの道中とあって、出発当日の翌週月曜となっても心の準備は出来ていなかった。

 あれから茉柚子には取り急ぎハンカチのお礼をメールで送り、立ち退()きの件については園長・茉柚子への連名宛てで、手紙をしたため郵送した。

 自分の母親の手掛かりが見つかり、ロシアへ探しに出掛けること、其処から戻ったらすぐに返事をすること、それだけを簡潔にまとめ伝えるのが、やっとといった心情だった。

「あ、モモたん! いたいた~」

「リンちゃん?」

 前日にこの街での興行を終えたので、皆が慌ただしく移動の準備を進める中、空港へ向かうため荷物を車に積んでいると、自分の背中の向こうからリンの声が近付いてきた。

 にこやかな笑顔で何やら手に掲げながら、その後ろには秀成も続いて手を振っている。