「お前がモモと行けばいいだろっ、アン!」

 困惑する凪徒がギロッと(はす)向かいの杏奈を睨みつける。

 そんな視線を不敵な笑みであしらった杏奈は、予想通りという表情をして反論を返した。

幼馴染(おさななじみ)でまがりなりにも義母になった女性の変化に気付かないなんて、貴方センスないわね~それじゃあモテないわよ? 私の格好を見て分からない?」

「あっ……」

 隣のモモがその途端小さく声を上げた。

 杏奈にしては緩やかな衣服、低く安定した靴底……。

「モモちゃんは気付いたようね。そ、私、妊娠してるの」

「おめでとうございます!」

 両手を口元へ持っていきながら、祝いの言葉を元気良く叫んだモモに、杏奈は満面の笑みで「ありがとう」と(つぶや)いた。

「まだ性別は分からないけれど、どちらにしても貴方にだけは似ないことを祈るわ、ナギ」

「どういう意味だよっ」

「──そういう意味よ」

 クスッと笑う杏奈に釣られてモモも同じ顔をしたが、凪徒の険しいままの視線に捕えられ、咄嗟(とっさ)に口角をちぢ込ませた。