「モモが……? へぇ~まさか“エイス”とはな」

 見開いた吊り目が、真ん前のモモを脳天から足先まで何度も見回した。

 飛び出た感嘆の声に、モモは更なる驚愕の声を上げた。

「エ、エイズ!?」

「エイズじゃないっての……『エ・イ・ス』。one eighthの略だ。『八分の一』ってこと。お前の母さんがクォーターだからな」

 凪徒はモモの聞き間違いに呆れながら、頬杖を突いて説明した。

 ──あ、あたしの血の八分の一がロシア人?

 余りに驚くことばかりで、モモはそれ以上言葉にならなかった。

「杏奈、其処まで分かってるなら、ロシア側の家系も、椿さんの居場所も特定してるんだろ? もったいぶらずに教えろよ」

 絶句したモモに代わって凪徒は杏奈へ催促をしてみたが、

「残念ながら私が得たのは此処までよ。でもご実家がロシアに在るとなれば、ロシア、特にモスクワ周辺に在住している可能性は高いでしょ?」