「何だよ~気が利かねぇな!」

(なま)けてあったまってばかりいるからですっ」

 そんな誰かれともなく始まるやり取りは、ケンカ腰でも微笑ましかった。

 調理の片付けを終えたモモも一団に加わり、楽しそうに皆の様子を見守る。

「そう言えば……」

 そんなモモが視界に入り、暮がふと尋ねたが、

「次の場所って、モモのいた施設の近くじゃないか?」

「え……? あ、はい」

 ストーブに背を向け温まっていたモモが振り返り、立ち昇るバターの香りの先に向けた面差しは、少々バツが悪そうだった。

「モモ、この二年半に一度も施設に顔出してないよな? 幾ら卒園したとはいえ、小さい妹や弟代わりがまだいるんだろ? たまには会ってきたらどうだ?」

「は、い……」

「?」

 いつになく歯切れの悪いモモの返事に、其処にいた全員が首を(かし)げた。

 ──何か不都合でもあるのだろうか?

 確かに時折スケジュールのタイミングによって発生する長期休暇に入っても、モモが帰省場所として施設を訪れることはなかった。

 団員達は、まだ安月給のモモには交通費だけでも厳しいのだろうと推測していたが、今回は公共のバスでも行ける程度の距離だ。

 むしろ喜んでも良いだろうに、と皆が皆思い始めてしまう。