「どんなトコロって……全部ダヨ!」

「え……? 全部?」

 リンの元気な即答に、モモも同じく目を丸くする。

「うん! リンのココロが「ヒデナーの全部、大好き!!」って叫んだの。だから全部~」

「心が……」

「そうダヨー! ドコとかドンナなんて言えないヨ~だってココロが叫んだんだモン!!」

 ──心が……叫んだ──。

 モモは刹那あっけに取られて口を半開きにしたが、やがて閉じ、微笑んだ。

 ──そうだよね。きっとあたしの心もいつか叫ぶ。「先輩の全部、大好き!!」って!

「ありがとう、リンちゃん」

「へ? 何で「ありがと」?」

 今度はリンがあっけに取られたが、モモはその前を横切り、トイレの中へ去ってしまった。

 ──好きだと思っているのは自分だ。先輩があたしのことをどう思っていても、もう気にするのはよそう。例え隣からいなくなったとしても、この二年半、ずっと好きだったのが『あたし』なんだから──。

 そう想えたら途端に心が軽くなった。

 どんなに震える冬の空気の中でも、胸の辺りがじんわりと温かく光り、帰る足取りもフワフワと羽の生えた感じがした──。



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