「いいよ、弁解なんてしなくて。でも戻ってくれば分かる……そんなの一時(いっとき)の錯覚だったって。離れちゃえばきっと忘れるよ。ずっと傍にいるからそう思わされてるだけなんだ。だけど僕はモモを忘れなかった……二年半、幾ら会えなくても。就職して二年、今の職場で下っ()仕事ばかりだったけど、最近設計の勉強をさせてもらってるんだ。中卒だけど、会社は僕の中身を買ってくれた。それに応えたいし、周りの高学歴になんか負けたくない。ちゃんと将来を考えてるつもりなんだ。だから……良いよ、今はあっち(、、、)の『返事』はしなくて。戻ってきて、僕を良く見て、それからでいい」

「洸ちゃん──」

 モモは踏み込まれ荒らされた心の中を、自分自身で組み立て直せる状態でなくなった。

 ──ずっと傍にいるから「好き」だと勘違いしている? そんなこと、あるのだろうか? 確かに先輩の見た目は十人並みを遥かに超えている──だから?