「現状は茉柚子さんの言った通りなんだ。モモを巻き込んで悪いとは思ってる……でも──分かるよね?」

「……うん」

 洸騎からも聞かされたことによって、これは現実なのだとまざまざと感じられた。

 けれどやはり気になってしまう──何故『自分』なのか。

「どうしてあたしなんか……あたし位のパフォーマー、きっと日本に沢山いる筈なのに……」

「そんなことないって! モモ程の天才、そうはいないよ! そのプロデューサーもさすが目の付け所が違うよなっ!」

「そうなのかなぁ……」

 モモを『その気』にさせようとしているのか、洸騎の興奮した口振りに、モモは顔をしかめた。

「あたしなんてまだまだ……先輩の足元にも及ばないし……」

 自分がプロデューサーであったなら。自分などより凪徒を引き抜くだろう。モモは心の片隅でそんなことを思った。

 ──が、

「『先輩』ってモモのパートナーのことだよな。モモはそいつが好きだから、この街に戻りたくないの?」

「え?」

 洸騎の微かに張り詰めた声質に驚き、モモは目線を上げ、正面の責めるような眼差しにうろたえた。

「ちがっ──」

「桜とかいうあの兄ちゃん、凄いモテるんだろ? モモも好きなの? だから──」

「あ、あの──」