「ん……あ……ああっ!? すみません~!!」

 それから三十分程した頃、いきなりモモが飛び起きて大声を上げた。

「あ、モモ? 目が覚めたのね。大丈夫よ、ゆっくりしていて」

「茉柚子さん……お、お帰りなさい」

 半身だけを起こして周りを見回したが、園長は席を外していた。

 自分の両隣には未だ眠りに落ちたままの子供達が数人いるが、幾人かは目覚めてまた何処(どこ)かへ遊びに行ったようだ。

「あのね、モモ。ちょっと話があるのだけど、良いかしら?」

 一段高くなっている畳敷きからフローリングに降り立ち、茉柚子の(くつろ)ぐテーブルに近付く間に問い掛けられた。

 ──何だろう? 茉柚子さん、あたしの目を見なかった……?

「はい……では、ちょっとお手洗いだけ行ってきます」

 モモは(わず)かな不安を感じながら、(うなず)く茉柚子を背にして、数部屋先の化粧室に向かった。



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