「あ、約束通り来てくれたのね、モモ」

 用を済ませに外出していた茉柚子が戻り、母親と共に眠りこけた面々を見下ろす。

「随分大人びた感じがしたけれど、寝顔は昔と変わらないわね」

 園長の細められた眼から愛情が(こぼ)れ注がれた。

 それを感じたように、眠りながらもモモは微笑みを刻んだ。

「モモが起きたら……話してみようと思うのよ。母さんも同席する?」

 ややあって茉柚子は背後の椅子に腰掛け、少し気まずそうに園長の横顔へ問い掛けた。

 途端に消え去る母親の笑顔。

「わたしは……やっぱり賛成出来ないわ。もう此処を旅立ったモモを巻き込むことなんて……他に方法はないのかしら……」

「私だって出来ればモモにそんなこと()いたくないわ! でも──今はそれしか……(のが)れる道がないのよ……」

「……」

 返事も出来ないほど寂しい顔を見せた母に、茉柚子もまた何も言えず、二人はただ静かにモモの目覚めを待ち始めた──。