「おい……暮、何か知ってるんだろ? 教えろよ、モモに何が()ったんだ!?」

 モモがプレハブを後にしてすぐ、凪徒は待ってましたとばかりに隣の暮へ問い掛けた。

「何もなかったんだ、お前は安心していい」

 正面を向いたまま黙々とご飯をかき込み、淡々と答える暮。

「何もなかった訳ないだろっ、おいっ──」

「ごちそう様~!」

「暮っ!」

 トレイを持ち上げながら立ち上がった暮が、表情を見せないまま凪徒を見下ろす。

「モモは自分で夫人の(もと)へ行った。それはモモが前向きな証拠だ。だからもう詮索するな。これ以上心配は()らない」

 ──暮……?

 凪徒が呆然と言葉を失っている内に、暮はスタスタと出ていってしまった。

 残された凪徒は口元をいつものへの字に曲げて頬杖を突き、一つ大きく息を吐き出す。

 片手で椀を持ち上げ、味噌汁を一気に飲み干した──。



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