「モモ、何か……綺麗になったな。恋でもしちゃってたりするの?」

「え?」

 洸騎がまじまじと顔を(のぞ)くように数歩近付いてきて、モモは驚き数歩下がった。

「ち、違うよー。ショーの時は濃い化粧してるから……」

 施設で双子のように一緒に育った洸騎が、反応を見るようなそんなことを言った試しはなかったのだ。

 けれど自分が咄嗟(とっさ)に否定の言葉を出してしまったことに、モモは刹那後悔した。

 ──「恋してるよ」って言えれば、終わる話だったのに──。

「ずっと来なかったの、僕の所為(せい)だよね?」

「……」

 ついに核心に触れる言葉が洸騎から現れて、モモは一瞬答えられなかった。

「ほ、ほら、今回みたいに近くで巡業にならなかったから……それにお休み中でも(した)()は練習しないと──」

「そうかな……天才のモモに限って、そんなことあるの?」

「洸ちゃん……」

 微かに語気の強くなった声に萎縮してしまう。

 もうこれ以上言い訳は出来ないと思った。