「ご、ごめん! 今までいたの気付かなかった……」

「別に大丈夫だよ。みんなが落ち着くまで待ってたんだ」

 茉柚子や中学生達の壁がモモの目指す視線の方へ身体を向けたことにより、押し広げられた空間から誰よりも高い姿が近付いてきて、モモは徐々に心臓が波打ち出したのを感じた。

 ──洸騎(こうき)──モモの同期であり同い年であり幼馴染(おさななじ)み。

 そして兄でも弟でもある人。

「茉柚子先生、いい? モモ、少し話があるんだ」

 洸騎は右隣となった茉柚子に尋ね、返事を待たずにモモに声を掛ける。

「うん……それじゃ、外にでも」

「此処でいいよ。みんなは先に帰ってて」

 小さいメンバーからはブーイングの声が上がったが、茉柚子は了承し帰り支度を進めて、「じゃ、水曜にね、モモ」と別れの挨拶をし、洸騎以外の皆と出ていってしまった。

「……背、伸びたんだね」

 二人きりにされたプレハブがいやに広く感じられて、モモは立ち尽くしたまま沈黙を破った。

 ストーブが焚かれているのに、空気がキンと痛く思える。

「さすがに二年半だからな、モモのパートナーみたいに無駄(、、)に伸びることはなかったけど」

 ──無駄にって……。

 凪徒の身長へケチをつけた洸騎の言い回しに、つい苦笑いをした。