夕方。


家に帰った私は、" 生活ノート "を開いた。


" 生活ノート "というのは、いわゆる連絡帳のようなもの。


明日の時間割や、持ち物、大事なことなどをメモする。


そのノートには、生徒と担任の先生がやり取りできる


コメント欄もあった。


私はそのコメント欄に、バレンタインのことを書いた。




『放課後に勉強を教えてくれたお礼に、


チョコを作って渡したいんですけど…って


言ったら、困りますか?』




「…書けた!」


文字を書くその手は。


緊張からか、少し震え気味になっていた。








翌日の昼休み。


私は、自分の席で読書をしていた。


給食当番として片付けに行っている愛結美を待つ。


するとそこに津田先生が私のところへ歩み寄ってきた。


「おっ、ツンが本読んでる!珍しいな」


「あゆちゃん待ちなの」


表面上では常に笑顔。


内心、話しかけてくれて嬉しいのと


ドキドキしてるの半分。


「そういえば、ノートに書いてた"あの件"だけど…」


津田先生は少し声を小さくして話す。


「楽しみにしてる」


「…うん!////」


最後、先生は少し笑って教室を出て行った。


たった数秒のやり取り。


でも。


すごく嬉しかった。


バレンタインを楽しみにしてくれてること。


話しかけてくれたこと…。


初めての事だし、慣れないけれど。


津田先生に、"美味しい"って言ってもらえるように。


精一杯、頑張って作ろう。