「あなたには、都姫様との婚約が……!」
時隆の秘書の言葉を聞いて、穂波は都姫との会話を思い出した。三年ぶりに都姫と話したあの日、確かに都姫は婚約者について話していた。
『私、結婚するの。あの氷宮家の当主とよ? 凄いでしょう!』
『何度かお会いして、私はすっかり彼を好きになってしまったわ。あんなに強くて美しい男性、他には居ない。絶対私のものにするの』
都姫のその言葉を聞いた時。椿の存在が頭によぎりはしたが、あれが本当に椿のことを指していたなんて。
思念を通して、時隆が椿に婚約するよう頼んでいた女性が居たことも知ったが、その女性も都姫だったということだ。
散らかっていた線が一つになると同時に、時隆が、氷宮家の当主である椿と都姫を結婚させようとしていたとなれば……あの序列の意味は、やはり時隆が当主にしたかった人間や、適性のある人間の順番を示しているのかもしれないと穂波は思った。
「婚約は破棄だ」
「! そんな……何を今更!!」
黙って様子を見ていた都姫だが、ついに声をあげた。一族の人間たちが都姫の方へ、一斉に振り返る。
「穂波さんの侍女が先日、家に入った強盗に刺されたが……けしかけたのはあんただ」
