序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜

 男……椿の背後から姿を現したのは穂波だった。

 椿はこの部屋に来る前、穂波に一つ問いかけをした。藤堂家の当主を目指す気はあるのかと。

「目指す気はありません。私は、当主の器ではないと思うからです」
「器か……ではどんな者にその素養があると思うんだ?」

 少し寂しそうに笑うと、穂波は時隆や、さらに先代の当主を思い浮かべながら答えた。

「一族を愛している方です。私が見て来た今までの当主は、皆そうでした」

 思念の中の時隆は一族に良い感情を持たず、苦しんでいるようには見えたが、穂波はずっとそうだったわけではないと確信していた。

 一族全員の顔、名前、どんな性格かまで、時隆は覚えていたし、分け隔てなく平等に接していた。彼が非凡な能力を持っていたこともあるが、この一族内で自身が愛された思い出がなければそこまでできないと、穂波は思っていた。

「この一族の端っこで生きてきて、辛いこともたくさんありました。正直、今だってまだ、離れられるものなら離れたいと思ってます。だから私にその力は欠けているんです」

 序列も百位の落ちこぼれらしいですしと、くだけた調子で穂波は最後に付け足した。

 その返事を聞いた椿は、一度頷き、来てほしい場所があると穂波を病院から連れ出した。こうして連れて来られた場所が藤堂家の、例の集会部屋なのであった。

(な、なんで椿さんは私をここに……!?)

 椿に手首を掴まれ、一族の人間たちの前に立たされた穂波は何が何だかわからず、ぐるぐると目が回りそうな思いになった。部屋中から疑心と嫌悪の目を向けられていることもよくわかる。一刻も早く逃げ出したい気持ちと、椿を信じる気持ちが拮抗する。