男たちの言葉に、やはりそうだよなと賛同する空気が部屋中に流れる。穂波を否定する声に、平静を装いつつも思わず都姫の口角は上がってしまう。

(やっぱり私の念力は最高だわ。思う様にことが進む)

 うっとりした思いに駆られた……ついその時だった。

「か、勝手に入られては困ります! 今話し合い中ですので……」

 部屋の障子の向こう側から、慌ただしい声と足音が聞こえて来た。白熱していた時隆派と否定派の議論がぴたりと止む。都姫もただならぬ気配を感じ、障子の方に振り返った。

 がらりと障子が横に開くと、そこには一枚の絵から切り取られて出て来たような、絶世の美貌の男性が立っていた。屋敷の使用人の制止を振り払い、ここまで来たらしい。

(!? どうして彼が)

 都姫は、その男が誰なのかよく知っていた。予想もしなかったタイミングでこの男が現れたことが、どれほどまずい事態なのか、頭の中で警鐘が鳴り響く。

「なぜ、あなた様がここに……?」

 いつも騒がしく、文句ばかり唱えている候補者たちも、この男を目の前にして口を開ける者は居なかった。時隆の秘書が恐る恐る尋ねると、男はすぐには質問に答えなかった。後ろに隠れていた女性の手を引き、自分の横に立たせた。

「し、白洲穂波!」