「白洲穂波の話によれば……当主になってはいけなかった。この家を許せない。時隆殿はそう言っていたんですよね」
「前当主が、次の当主をどう決めるか指定できる……決まり自体に限界があるのでは? 時隆殿に関しては選考もなく前当主の直名でしたが、結果が現状です」

 便乗するように、男の周囲の者たちも口を揃えるように時隆を批判し始めた。否、男たちの目的は最初から時隆への批判ではなく、当主の決め方の見直しの要請だと、ここまで聞いて都姫は気づいた。

「今回の当主選びが難航しているのは、時隆殿から我々への嫌がらせでしょう」
「時隆殿はそんなことはしない! 分家の分際で、図に乗るなよ貴様ら……」
「本家がしっかりしてないから、こうなってるんじゃないですか!」

 男は口元を歪めると本家の人間たちを一瞥し、嘲笑した。あーあ、最悪な空気だと、都姫は心の底で溜め息を吐く。

 当主を決める方法まで変えられてしまうと、せっかくどうしたら当主になれるか神託で知れたのに面倒なことになる。そろそろ口を挟もうか考えていると、また穂波の名前を口に出す者が現れた。

「やはり白洲穂波の念力を使って、時隆殿の真意を探すしかないのでは……」
「侍女殺害未遂で先日まで捕まってた女ですよ? 誤認逮捕だったとは聞きましたが」

 すかさず男の周りに座る、批判派の人間たちが口を挟んだ。今日も話し合いに同席していた蓮華や冬緒たちは、自分の家で起きたことだけに気まずそうに目を伏せる。

「さらにあの女に、母親殺しの噂もあるのは皆さん知っているでしょう。序列も百位ときていて存在自体、縁起が悪い」
「我が一族に不要な人材だ。頼るのはやめた方が良い」