都姫の力は、優れた力ではあるが使用回数には限りがあった。

 神託を得るにはあらかじめ受けたい内容をまとめ、儀式の準備をする必要がある。念力を使った際の体力の消耗も激しい。そのため目先に沸いてくる小さな疑問には、自分で答えを出さねばならない。

「でもここまでの情報でわかったのは、時隆さんは当主なんかやる器ではなかったということです」

 足を崩して坐っている、ぼさっとした髪をした、見るからにだらしなさそうな身なりの男が呟いた。本家ではない、どこの家かも忘れたが分家の男だ。

 話を聞いていなかった都姫だが、周囲を恐れぬ男の発言に興味を持ち、意識を少しだけその場に戻した。

「時隆殿を侮辱するなど……恥を知れ!」

 藤堂本家の、時隆を慕っていた女性が男を怒鳴りつけた。女性に加勢するように、他の本家の人間たちも男を睨みつけている。