都姫は、何かがおかしいと思った。

 姉の穂波をもう二度と自分と関わるなん思わないぐらい叩き潰すには、どうしたら良いか?

 一族内でも最上位と評される、自分の望んだことへの神託を受ける念力で、その方法はわかったはずだった。

「穂波さんにもう頼れないとなると、難しいですね」

 今日も藤堂家で、序列候補者たちが集まり、時隆を殺した犯人探しの話し合いが行われていた。多くの者が穂波に頼り、時隆の私物の思念を読み取ってもらったようだが、依然として誰も決定的な情報を掴めていない。

 そんな話し合いよりも、なぜ自分が神託通りにやったのに上手くいかなかったのか? 都姫は考えていた。

 千代を殺すようにそこらへんの盗人をけしかけ、澄人に金を持たせ……穂波がやったと証言させれば完璧だったはずだ。

(誰かが邪魔をした)

 穂波は釈放され、澄人たちが捕まったと、都姫の耳に入ったのはつい先刻のことだった。聞いた途端、思わず都姫は自分の親指の爪を噛んだ。昔からの悪癖だ。報告に来た使用人が慌てふためくぐらいに、指からどくどくと血が流れ落ちる。

 穂波を助ける為に邪魔をした奴が居る。念力を覆せるのは、その相手も念力を使える人間だからに違いないとすぐ勘づいた。

(私の力を上書きできるなんて……どんな念力の使い手よ)