序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜

 椿に連れて行きたいと言われた場所は、建物の前に来るまで見当がつかなかった。街中でも取り立て大きな建物に病院と書かれた縦看板を見れば、さすがにここがどこなのかわかった。

 何度か既に来ていたのか、椿が受付にひとこと話せばすぐに部屋へ通された。錆色の木板が敷き詰められた床に、縦に長いガラス窓、深緑色のカーテンの病室。壁際に一台置かれたベッドに横たわるのは穂波のよく知る人物だった。

「!! 千代っ」

 千代だ。深く眠っているが、微かに肩が上下し、呼吸をする音が口元から聞こえてくる。

「千代……千代……っ」

 だらりとベッド横に投げ出された千代の手を、穂波は固く握り締めた。握り返されることはなく、今はまるで人形の手のように冷たいが、確かに千代は生きていた。ここ数日間、留置所に居る時も、取り調べ室に居た時も、穂波は千代の安否ばかり考えていた。

「早く顔が見たいだろうと思ったんだ」
「椿さん……ありがとうございます。あの警官の方が千代の話をしようとした時に遮られたので……千代に何かあったのかと不安だったんです」
「あー……あれはあの馬鹿がまた余計なことを言って、あんたを傷つけるかもしれないと思ったから遮っただけだ」

 逆に不安にさせてしまったなと、椿は恨めしそうな表情で後ろ髪を触りながら、この場には居ない路夜を恨んだ。