椿の言葉に、穂波は少し気まずそうにしながらサンドイッチに口をつけた。昔の自分と、今の自分が変わってしまったことを穂波自身も自覚していた。
「椿さんと私は、どこで出会ったんでしょうか。一方的に忘れてて申し訳ないので、教えてください」
「俺も再会した時わからなかったからな……でも、思い出してほしいから言わない」
「!」
意外な返事と、椿がいたずらっぽく笑ってみせる表情に穂波は驚いた。まさか簡単には教えてくれないなんて。わかることは、白洲家に来る前……三年以上前に出会ったということだけだ。
「わかりました。必ず思い出してみせます」
「楽しみにしている」
そう言って椿はコップに口をつけた。ベンチで紙コップに入ったお茶を飲んでるだけなのに、庭園で上質な茶を嗜んでるように見えてくるから不思議だ。この人は何をしていても様になると穂波は思った。
「話を戻しますけど……椿さんは、何の思念を読み取って、私の未来や犯人について知ったんですか?」
「それは、あんたをこれから連れて行く場所についてから話そう」
そうだ、もともと椿はどこかに自分を連れて行こうとしていたんだと穂波は思い出した。
「今は食事と、目の前の景色のことだけ考えれば良い」
穂波は椿の言葉通り、和やかな公園の風景を見ながら、サンドイッチやおにぎりをゆっくり噛み締めて食べた。食欲はあまりなかったが、これまでの疲れと外に出れたことによる安堵感が後押しした。思いの外、あっという間に食べ切ってしまった。
