「落ち着いたか?」
「はい、ありがとうございます」
公園のベンチに腰掛けハンカチで目元を抑えていると、少し席をはずした椿が戻ってきた。ベンチの背後にある木が、ちょうど良く日陰をつくってくれていた。木漏れ日がちかちかと二人の姿を照らす。
中央には、チューリップの花壇に囲まれた大きな噴水がある、この街で一番広い公園だ。陽に照らされた水飛沫が、きらきらと宝石の粒のように飛び散る。
生ぬるい、ぼんやりとした風に顔を撫でられ、草木のにおいが鼻をかすめる。どこにでもある春の午後だった。和気藹々とした、談笑する声が案内を流動していく。
「満足な食事もここ何日かできてないだろう。買ってきた」
椿が差し出してきた、緑茶と氷の入った紙コップを受け取る。少し間をあけて腰掛けた椿は、空いたベンチのスペースに橙色の包装紙に包まれた箱を置いた。紐解いていくと、ハムとチーズのサンドイッチが入っていた。
「こっちもある。穂波さんの好物がわからなかったから、二つ買ってきたんだ」
好きな物を食べて良いと、さらに椿は竹の皮に包まれたおにぎりを二つ、箱の横にそっと置いた。
