それから数日間、毎日尋問は続いた。穂波は虚ろな目で、警官の言葉を受け続けるだけだった。

 段々と警官の言動はエスカレートしていったが、散々白洲家で嫌がらせをされてきた穂波にとって揺さぶりにはならなかった。

「白洲穂波だな?」
「……」
「取り調べは俺が担当する」

 今日、取り調べで現れた警官はいつもの警官よりも随分と若かった。黒い短髪に、金縁眼鏡をかけた長身の男性だ。蓮華や冬緒たちと同じぐらいの年代……二十代後半ぐらいに見える。

 きりっとした顔つきに鋭い三白眼。第一印象は優等生のように見えたが……男は黒革のブーツを履いた長い脚を組むと、どかっと机にかけ始めた。

「つっても、あんたと話すことはもうないんだけどな」
「!?」

 挙句、男は煙草を出すと火をつけ吸い始めた。な、なんなんだこの男はと、昨日の警官とは違った得体の知れない緊張が穂波を襲う。

「あんたこれから、誤認逮捕ってことで釈放される予定だから」

 にやっと男は笑うと、見た目は地味だけど、凄い男に気に入られてんだねぇと煙を吐いた。凄い男? 誰のことだろう?

「なぜ、誤認逮捕だということになったんですか?」
「真犯人が見つかったからさ。これから取り調べになるが……窃盗の常習犯だったらしい。朝の屋敷に忍び込んで、早起きの女中さんに見られたから殺っちまったんだと」