その後、千代は病院に運ばれることになるが、穂波は千代がどうなったか知ることはできなかった。犯人は穂波だと訴える澄人の声は揺るがず。容疑者として警察署に連行されることになったからだ。

「澄人、なんでそんな嘘を吐くの……どうして……!」
「……」

 悲痛な穂波の叫びに、澄人は一言も返すことはなかった。俯いており、表情は読み取れない。

 信じていたのに。どうして、こんなことをするの? 蓮華たちや都姫に罵倒されたり、暴力を振るわれても出てこなかった涙が込み上げ、視界が霞む。

 それほど千代と澄人は穂波にとって、心の支えとなっていた。どんなに穂波が厳しい状況であっても味方をしてくれる特別な存在だった。その二人をいっぺんに失おうとしていたのだ。