「なんで……誰が千代を……」

 震える足を必死に動かし、どうにか立ち上がると千代に駆け寄った。自分の着物の帯を取り、血が流れ出る腹に押し当てる。

「誰か!! 誰か来てください!!」

 誰でも良いから手伝いに来てほしい。早く医者の元へ千代を連れて行かなければ……! 絶対に死なせるわけにはいかない。

「!? 誰か居るの……?」

 がさりと何かが動く音がして、穂波は反射的に振り返った。

「澄人」

 玄関の方と続く、木々に囲まれた脇道から澄人が姿を現したのだった。たまたま、配達で居合わせたのか? 見知った顔に安心し、穂波は澄人に助けを求めた。

「澄人、助けて! 千代が、千代が……っ!」

 しかし、澄人の後ろからもう一人男が現れた。黒い制服に身を包み、制帽をかぶっている……警察だ。