「何度かお会いして、私はすっかり彼を好きになってしまったわ。あんなに強くて美しい男性、他には居ない。絶対私のものにするの」

 美しい男性と聞いて、穂波の脳裏にこの前会った椿の姿がよぎった。椿の浮世離れした容姿にも驚かされたが、氷宮家の一族には美しい男性が多いのだろうか。

「あんたが三年前について吹聴して、話が破綻でもしたら? 一族にも大きな損害が及ぶわ。だから黙ってて。そして金輪際、私に関わらないでほしいの」

 なんて自分勝手な頼みなんだろうと、穂波は都姫に対し、強い怒りを覚えた。蓮華たちに対する感情とは違う、本当の家族だからこその怒りだった。

 人殺しの汚名を着せておいて、三年前のことは黙っていろだなんて都合が良すぎる。

「それはできない」
「……」
「なんで三年前にあんなことをしたのかもわかってないし、都姫、どうして変わってしまったの? 大好きだった母さんを、私が刺したことにされたままなのも嫌だ。何も知らないまま別れることなんてできない」