「さっき私、助けてあげたわよね? そのお返しと言っちゃあなんだけど。今この場を、私とあんたの最後にしてほしいの」

 先程、皆の前で堂々と話していた時と、打って変わった態度だ。気怠そうに髪をかきあげながら、都姫は穂波を睨みつける。

「……なんで三年前、お母さんを刺したの? どうして私のせいにするの?」
「だから、それを知ってるからあんたは邪魔なんだよ」

 三年前。都姫が母親を刺す日まで、穂波と都姫はどこにでも居る普通の姉妹だった。どうして、いきなり変わってしまったのだろう。

「私、結婚するの。あの氷宮家の当主とよ? 凄いでしょう!」
「氷宮家の当主と……?」

 対立関係にある藤堂家と氷宮家の人間がなぜ……と穂波は疑問に思った。

 氷宮家の当主は、これまでの歴代当主の中でも非常に優れた念力を持っており、優秀な一族の人間たちが束になっても敵わない強さを誇ると噂だ。冷酷で近寄りがたく、鬼のように恐ろしい男だと聞いたことがある。