「まず、選考方法について全員で調べてほしい。方法を確認できた者は、速やかに全員に報告するように」
「わざわざ報告する必要、ありますか?」
「せっかく周りと差をつけられるのに、律儀に言うなんて馬鹿みたいではないですか」

 時隆の秘書に対し、手前の席に座っていた何人かが反論した。部屋の手前に座っている人間たちほど序列が高くなっている。誰が決めたわけではないが、自然とそのような配置になっていた。

「今回の選考は個人戦だ」
「この集まりも意味はない」
「そんなこと言わないで、一族全体のためにも協力した方が良いのでは」
「一刻も早く次の当主は決めた方が良い」

 個人で進めるべきという者と、協力が大切だと訴える者で、室内は段々と二極化し始めていた。

「本当にこの一族って、まとまりがないわよねえ、兄様?」
「……」

 蓮華は足を崩すと、騒ぎ立て始めた周りの様子を見て、楽しそうに笑った。普段、優秀な藤堂家の人間たちが二手に分かれ、必死に争っているのが愉快でしょうがないのだ。