「本日はお越しいただき、ありがとうございます。これより、藤堂家十三代当主の選考についての会議を始めさせていただきます」

 襖を取り除き、普段は仕切られている三つの部屋を繋げた和室に、藤堂の家系の人間たちが集まっていた。部屋の両脇に、縦一列でずらりと一族の人間たちが座っている。男女まばらには座っているが、男性の方が比率としては高そうだ。

 時隆の手紙に書かれていたのは百名だが、今日の参加者を見てもその七割ぐらいだろうか。

「まず、今回の当主決めの難点は、時隆様が具体的な選考方法について明記していない点であり……」

 先頭で立って話すのは生前、時隆の秘書を務めていた初老の男性だ。白い口髭をたくわえ、左手に杖を持っている。男は、改めて一族の人間たちが悩んでいる点を議題に挙げ始めた。

「……」

 都姫はその斜め前で退屈そうに目を細め、頬杖をつきながら話を聞いていた。一族の他の人間たちが辿り着けていない、どうしたら当主になることができるのか……その方法を、彼女は自身の念力をもってすでにわかっていた。