その名の通り、鍵と錠のようにかちりとはまる、互いにたった一つだけの存在。二つの力が揃えば、より念力の可能性が引き出されると噂されている。

 椿が藤堂の家系から探し出そうとしていたのは、昔会ったことがある運命の鍵らしい。

 穂波は、自分の念力に驚いていた椿を見て、もしかしたら自分が探し人だったのかと一瞬だけでも思ったが、全貌が見えてきて違うと確信した。

 椿とも、自分の対になるような念力を持つ者にも、今まで穂波は出会ったことがないからだ。

「俺は、運命の鍵に返しきれない恩がある。もう一度、どうしても彼女に会いたくて探していた」

 それから椿は、婚約者が居るんだと言葉を続けた。

「このまま周りの期待に応え、彼女と結婚したら後悔すると思った。藤堂家を回るために家をしばらく留守にしているから、周りから非難の目もある。だが俺の人生は俺だけのものだ。誰にも邪魔はさせない」

 穂波は、その言葉は、椿がただ自分の思いを語っているだけでなく、目の前の自分に向けて言ってくれているのだと思った。

 自分の人生を、自分の思うままに生きろと、伝えようとしてくれているのだ。

 どうしてこの人は初めて会った自分に、たくさんの言葉や思いを分けてくれるのだろう……そして、この人に想われている運命の鍵の女性はとても幸福だと、早く再会できると良いと、穂波は心から願った。