「私が六つの時なので、随分と前になります。十五年ほど前のことでしょうか」

 突然、触れた物から、見たこともない映像が頭によぎってくるようになった。最初の頃は制御ができず、自分の意思に関わらず読み取ってしまっていた。今は視たい時だけ読み取れる程には力を操れるようになり、生活に上手く利用している。

「私の念力は、椿さんにとって何か意味のある力なのでしょうか?」

 穂波に問い返され、椿は黙ったまま、何かを考え込んでいるようだった。

「……運命の鍵の話は聞いたことはあるか?」

 運命の鍵。念力を有する者たちにとって、一つの都市伝説になっているものだ。穂波も本でしか読んだことがなく、実在するのかもわかっていない。

「自分のもつ念力と、対になる念力をもつ相手のことですよね?」
「ああ。昔一度だけ会ったことがあるんだ。俺の、運命の鍵に」